時空を超えた誇り — Chapter: 02「寡黙なる誇り」

そこにいたのは、
本物のカウボーイだった。

にわかに信じがたいことだが、この30,000エーカーという広大な土地を、たった6人で運営しているという。

それにしては静かだ。すべてが止まったままのように思える。眼に映るのは広漠とした荒野。その合間には開墾された麦畑が延々と広がっている。動く気配は放牧された羊たちだけだ。

しかし彼らはすべてを持っている。彼らは口を揃えて「ここは素晴らしい」と言う。

その迷いのかけらも感じられない澄んだ眼に接していると、彼らに見えているものと、私がいま見ている光景は、同じようでいてまったく違うものなのではないかとさえ思えてきた。

彼らはお互いに血のつながった家族ではない。しかし、とても深い絆に支えられて暮らしていることは、すぐにわかった。だれもが常に、このチームのために自分ができることはなにかを考えている。彼らの共通の誇りは、音もなく言葉にもされず、しかし深く共有され、この広大な大地と共に受け継がれていく。

時を超えた誇りを前に、私はSIGMA DP1 Merrillを構えた。本物のディテールが迫ってくる。このカメラがもつ広い画角が生きる瞬間がきた。

ブレイン・カーヴァー:彼はこの牧場の後継者という運命を背負って生まれた。彼の寡黙さは、その重圧の現れだろうか。馬を優しく労りながら現れた彼が、カメラを見据えたその眼は、刃物のように鋭かった。

ベン・ムーザー:若くてハンサムなベン。仲間の奥さんたちから「おいしそう」と囃されてはにかむ。しかし牧場での彼は、まぎれもなく本物のカウボーイだ。それは人一倍大きな身体をしなやかに使う彼の身のこなしを見ればわかる。そして馬の鞍を手にした瞬間、溢れ出る自信を私は感じた。

スコット・キャメロン:シープドッグのコンテストを控え、羊を操る犬たちのトレーニングに余念がなかったスコット。彼も寡黙で自らのことを語ることはなかった。しかし彼が本物のカウボーイであることは彼が身に着けているものが雄弁に語っていた。

トレイシー・キャメロン:実は高地にあるこの牧場にはガラガラ蛇が無数に生息している。私も噛まれたことがあるのよと平然と言う彼女に噛まれた指を見せてもらった。長い年月、存分に働いてきている手はまぶしくもあった。

ソニー・コックス:伝説のカウボーイ。足を痛めて引退したいまも、ヒーローとしてこの牧場だけでなく町の人々にも慕われている。「17歳の頃に酒が飲みたくて大人びて見せようと生やしはじめたんだよ」と笑いながら立派な髭の先を少しねじり上に向ける仕草が粋だ。私は眼を合わせ息を止めて撮った。SIGMA DP1 Merrillの精密な液晶に、刻まれた風格が写し出された。

■インペリアル・ストック・ランチ
1871年から今日まで、4代続く歴史ある個人経営の牧場。最盛期には北米で最大規模の牧羊農場として名を馳せた。また羊毛と食肉の両方に適した「コロンビア種」と呼ばれる種を生み出したことでも有名。輸入の拡大によって羊肉価格が暴落し、北米の大きな牧場のほとんどが倒産に見舞われるなか、この牧場は独自の道を選択し、大企業への一括した出荷から品質の良さを理解するレストランや食肉店に直接販売する道を開拓した。化学肥料を使わず、牧場運営に欠かせない羊・牛・馬の飼料のすべてを、この牧場で育てたもので賄う「自給自足」を貫き、いまでは完全な継続可能性をもった牧場として、世界から注目されている。
http://www.imperialstockranch.com/

  • Chapter: 01「時空の歌声」
  • Chapter: 02「寡黙なる誇り」
  • Chapter: 03「カウボーイの甲冑」
  • Chapter: 04「ともに生きる」

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