時空を超えた誇り — Chapter: 01「時空の歌声」

いくつかの町を通り過ぎた。目的地としている牧場は、もうすぐのはずだ。道を確かめようと、ひなびた町に入り、車を止めた。しかしそこは無人の町だった。

人影はない。音もしない。ふと、朽ち果てたクラシックカーが捨てられているのが見えた。

私はSIGMA DP1 Merrillを片手に車を降り、構図を決めてシャッターを押した。そして、液晶にそれが映し出されたその瞬間、私のなかで、私だけに聞こえる歌声が響き渡った。

振り返ると、さまざまなものが私に呼びかけている。死に絶え、枯れ果てた光景だとばかり思っていたものを不意に美しいと感じる。まったく違う表情を見せはじめる、時間が描いたアート。古き良きものがもつ、よろこびに満ちた歌声。それを心の耳で聞きながら、応えるようにシャッターを押す。

SIGMA DP1 Merrillを通して、私のなかの、日常をアートに変える視座にスイッチが入った。私はいま足を踏み入れたのだ。

どれほどの時間を経たものだろうか。塗り重ねられた色が、風雨に晒されて美しい表情を見せている。描こうとしても描けない微細なテクスチャの連続。SIGMA DP1 Merrill搭載のセンサーは、光を一切捨てないフルカラーセンサー。だからこそ、この色と質感のハーモニーを、アートとして写しとることができる。

1940年代のクライスラーが静かに佇んでいた。アメリカが豊かさに溢れ、光り輝いていた時代のクルマだ。そのよろこびに満ちたグラマラスなボディは朽ち果て、遠目に見ればただの鉄くずだ。しかし近づき、切り取るように構図を決めるとまったく違う表情を見せた。

最初、地面に落ちているテキサコの看板に呼び寄せられた。失せていない赤の鮮やかさが眼を刺すようだ。ふと見上げると、そこに別のアートが出現した。判読できないまでにひび割れながらも、いまも強いメッセージを発信している。

この町が、馬車の時代から栄えていたことの証だろうか。扉を囲むように馬蹄が打ちつけてある。馬たちの蹄の音や嘶きが私の耳にこだまする。

■オレゴン州・シャニコ(Shaniko)
1900年のコロンビア南部鉄道開通に合わせて、オレゴン州中部と東部の羊毛の輸送ハブ拠点が計画され、市庁舎を構える立派な町として建設。その繁栄は素早く、1903年には現在でも世界記録となっているほどの出荷数を誇り「世界のウールの首都」と呼ばれるほどに成長。だが栄華は長くは続かず、別の輸送ルートが建設されるなどして衰退。1942年には鉄道自体が廃止され羊毛流通拠点としての役目を終えた。

  • Chapter: 01「時空の歌声」
  • Chapter: 02「寡黙なる誇り」
  • Chapter: 03「カウボーイの甲冑」
  • Chapter: 04「ともに生きる」

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